秋葉忠利著書 アメリカ人とのつきあい方 選挙権と登録制度

選挙権と登録制度

 
 免許証は、試験を受けないともらえませんが、ある年齢に達すると自動的に生じる権利
もあります。お酒やタバコを飲む権利もそうですが、一番大切なのは 選挙権と被選挙権
でしょう。選挙権や飲洒・喫煙の権利は最近、各州とも十八歳で得られます。ですから、
十八歳になるとヽ免許証も選挙権もあり、お酒やタバコが飲めるようになって、ほんとう
に大人になったのだといってよいように思います。

 かつて、選挙権を得るのは日本と同じく二〇歳だったのですが、それが十八歳に下げら
れたのには理由があります。以前、アメリカに兵役、徴兵制があったとき、兵隊にとられ
る年齢が十八歳だったからです。十八歳になると、選挙権がなくても兵役の「義務」だけ
は生じたのです。ところが、べトナム戦争反対運動が起って、若者たちが、それに文句を
つけました。われわれは十八歳になると徴兵されて戦場に送られる。そこで死ぬことも多
い。しかしながら、それを決める国政には参加できない。それはおかしい、という意見が
出てきたのです。その結果、一九七〇年ごろから、州ごとに選挙権が十八歳で得られるよ
うになりました。
 ここでアメリカ特有の登録制度を紹介する必要があります。十八歳になると、自動的に
選拳権はもらえるのですが、実際に選挙で一票を投じるためには登録をしなくてはならな
いのです。現在のアメリカにも少しは残っているのですが、この登録のやり方を複雑にし
たり、むずかしくすることで、たとえば黒人が選挙権を行使できなくすることも可能なの
です。事実、一九八〇年の数字では、選挙権を持っている人々のうち、低所得層、ならび
にマイノリティーを中心に、約四〇%、つまり六〇〇〇万の人々は、登録をしていません。


広島ブログ