秋葉忠利著書 アメリカ人とのつきあい方 大学入学の準備

大学入学の準備 

まず大学に入り、卒業してから自立する人もずいぶんいます。
アメリカの大学へ入るための手続は日本とはかなりちがいます。まず必要な
のはSATという試験を受けることです。正式にはScholastic Achievement
Testのことで、二つの分野についての能力の試験です。一つは言語的な能力、もう一つは
数学的な能力を調べるテストです。総合点と、言語的な点と、数学的な点と、三つの数字
すべてが意味をもちます。 一年のうちに六回受けることができます。高校三年、つまり卒
業する一年以上前から受けることができるのですが、問題はそれほどむずかしくありませ
ん。この制度でもう一つすばらしいのは、自分がとった最高点を大学に報告することです。
 大学についての情報を集めることも大切です。大学でどういう勉強をしたいのか、その
ためにはどの大学が適しているのか、大学案内を見たり、カウンセラーに相談したり、先
輩の話を聞いたりして、いくつかの大学に的を絞ります。 つぎに、それらの大学から資料
を取り寄せ、夏休みなどを使って、いくつかの大学を訪れます。キャンパスを見たりヽ係
の先生や職員からその大学についていろいろ教えてもらいます。また、試験的にいくつか
の授業を聴くことも可能です。大学側から見ると、これは面接にもなっています。この段
階で優秀だとわかる学生は大学が積極的に「勧誘」します。

 こうして、どの大学に応募するかを決め願書を出します。願書のなかには、履歴書の簡
単なものも必要です。しかし、アメリカの受験生にとって、もっともだいじなことは、よ
いエッセーを書くことです。なぜこの大学に入りたいのか、大学でどういう勉強をしたい
のか、その他に大学時代、目的としていることはあるのか、といった内容です。高校時代
に書いたエッセーで、自分を売り込むのにいちばんよいものをいっしょにつけるといった
こともします
 高等学校から成績が送られるのは日本と同じですが、自分をよく知っている先生や年長
者の推薦状も必要です。そうしたものが総合的に判断されて合否が決ります。
 入学許可は、二月ごろから発送されます。大学の側は、どうしても来てほしいと思う受
験生から先に、しかも、奨学金を出すとか、授業料を免除するといったよい条件で許可を
出します。優秀な学生は、いくつかの大学に合格しますから、しばらくして、第二次の入
学許可が出されます、いわば、補欠入学です。しかし、補欠で入ったかどうかが、その後
の大学生活になんの影響もあたえないところは、日本と同じです゜
 大学に入ってからも親の仕送りを受ける大学生は多いので、かならずしも経済的に自立
しているとは言えませんが、親元を離れて生活し、周囲から一人前の大人として扱われる
ことで、ほとんどの大学一年生は、急遠に成長します。
 専門のカウンセラーがいて、学業のことから友人関係、経済的な問題等、ありとあらゆ
る相談に乗ってはくれますが、基本的には、一人の大人として自分で問題を解決して行く
姿勢が要求されます。もっとも、なかには、子どもの成績に文句をつけにくる教育ママも
いることにはいるのですが、大学としては、こうした学生が親から自立できるよう、(親
子双方に)アドバイスをします。
 精神的に独立するためにも、親から独立して日常生活を送ることが大きな意味をもちま
す。母親にとっては子どもが毎日きちんとした食事をしているかどうかが、とても・心配に
なりますが、大学入学後はじめての休暇−十一月のサンクスギビングの休みか、十二月
のクリスマス休暇になります−に帰省した息子や娘を見て、自分の手を離れても立派に
生活して行けることを確認します。それは親にとって、ほっと安心すると同時に、一抹の
寂しさを感じる時でもあります。


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