秋葉忠利著書 アメリカ人とのつきあい方 若者の家出
若者の家出
しかしヽ大学に入る以前に親とのいさかいが原因で、家を飛び出す高校生も、
アメリカにはひじょうに多いのです。親の暴力的な虐待に耐えられずに家出
するケースもあります。貧しさから抜け出したい場合もあります。両親の仲の悪さに耐え
られない子どももいます。
家出して、まず頼るのは友だちです。でも、親と同居している友だちは頼れません。少
し年上で、大都市に住んでいるような友人や知人を頼ることが多くなります。だれを頼っ
ていいかわからなくても、ともかく大きな町に飛び出して行くティーンエイジャーもいま
す。野宿したり、車のなかに寝たりという生活をするうちに、悪の道に入るケースもあり
ます。男女とも、麻薬と売春から犯罪にかかわるケースが圧倒的に多くなっています。
なかには、家出をしても、なんとか仕事を見つけ住むところを見つけて、自立する若者
もいます。しかし、まったく自分の力だけで家出後に自立するのは不可能です。どこかで、
誰かの善意が働いています。ですから、うまくいくケースは十中八、九例外です。
善意の一例に、ニュー・ョーク市にあるミフナント・ハウスがあります・一九六九年に
カトリックの神父さんが始めた施設ですが、これまでに十万人の家出青少年を受け入れ、
その三分の一が社会復帰しているそうです。私の友人のデボラは心理学者ですか、ボラン
ティア活動の一部としてヽ家出した若者を一時的に預かって親代りに世話をしています。
自分にも小学生の子どもがいるのですから、家出イコール悪、と考えているのでないこと
はもちろん、本質的に若者たちを信じていることは明らかです。
実は、私も家出した高校生を預かったことがあります。大学院の学生としてボストンの
近くに住んでいたころの話です。友人のパーティーでたまたまジョアンというユダヤ系の
アメリカ人と知り合いました。それから一週間ほどして、両親と仲違いして家出をした、
と彼女から電話がありました。夜遅く、しかも寝る所がないというので、ルーム・メート
と相談して、数日、居間のソファーを提供しました。二日目からは、話を聞いた他の家出
高校生が、泊めてくれと訪ねてくるようになりました。その間、家に戻るよう脱得をし、
結局、ジョアンは家に戻りました。その後、両親の理解を得ることができて、彼女は高校
を正式に中退し音楽の勉強を本格的に始めました。