マサチューセッツエ科大学(MIT)教授 ジョール・モーゼス9

今後ともますます複雑になって行く社会で、コンピュータがどのように役立つのか?

 「二〇年先のアメリカ社会を予見して、ダニエル・ベルは脱工業化社会になると言い、アミタ
イ・エツィオーニは再工業化社会になると言う。そのどちらのシナリオが実現しても、コンピ
ュータが中心的役割を果たすことに変わりはない。まず前者では、’情報の交換が社会の重要な
要素になる。つまり、マスコミとか保険業といったサービス産業が力を持つ。すると、オフィ
ス・オートメーションなどという形でコンピュータがますますさかんに使われるようになる。
 再工業化というのは、例えばエネルギー危機が起きて、再び石炭の生産を始めたり代替エネ
ルギーを開発したりするための工業化、あるいは肥大産業の効率化などを意昧する。こうした
面でも工業用ロボットが中心的な役割を果たすようになるだろう。
 コンピュータが増えれば、コンピュータ技術者の数も増えるが、すでにコンピュータ技術者
不足は社会問題になりつつある。コンピュータを学部で勉強しても大学院には行きたがらない。
仮に大学院は出ても大学には残りたくないという傾向がある。その結果、コンピュータ・サイ
エンス学科の定員は増えず、コンピュータ技術者の数も増えないという悪循環に陥っている。
小学校の先生があり余っている中で、算数の先生だけは不足しているという統計もある。皆プ
ログラマーになってしまったからだ。技術者不足の解消も犬切な課題である」
 脱工業化社会あるいは再工業化社会の時代になれば、コンピュータ・サイエンスの性格も変
わるだろう。その見通しはどうなのか、別の角度から聞いてみた。MACSYMA(マクシマ、
Project MAC's Symbolic Manipulation Systemの略。モーゼス教授を中心にして完成された)
の延長として将来を見てみたらと考えたのである。人工知能学研究者の間では”古典”と評価
されているシステムの一つだが、微積分学を集大成し、シンボル操作システムとしても重要な
ものだそうだ。まずは、その歴史的位置づけから語ってもらった。

広島ブログ
秋葉市長が25年も前にコンピュータ時代を予測して、当時の最先端科学者をインタビューした本です
より多くの市民に読んでいただくためにクリックをお願いします