マサチューセッツ工科大学(MIT)教授 マイケル・ダーツゾス3

故障の責任を誰がとるか

    
 ダーツーゾス教授の英語は、キングズ・インダリッシュ (英国の正統的英語)で、ヨーロッ
パ・アクセントが少々まじる。簡潔でその上、説得力もある。しかも、「コンピュータに記憶さ
せてはならない情報」などというくだりは、同じくMITのジョセフ・ワイゼンバウム教授
彷彿とさせる。ジョー(ワイゼンバウム教授の愛称)とはとても仲が良い」というダーツーゾ
ス教授の本棚にも目につきやすい場所に、(Computer Power and Human Reason(邦訳はサ
イマル出版会の『コンピュータ・パワー 人工知能と人間の理性』(サイマル出版会秋葉忠利訳、1979年) )が置いてある。彼もワイゼンバウム教に改宗したのか、聞いてみた。
 「いや彼とは意見の一致しないことがたくさんある。だが、一つだけ意見が一致していること
は、コンピュータ・エラーなどというものはないということだ。それは皆、人間の犯した誤り
の言い逃れに過ぎない。
 例えば、ボーインダ747という飛行機(いわゆるジャンボ・ジェット機)は、とても複雑
なシステムである。これが、万一墜落したとすると、それは通常、人間が何か誤りを犯したか
らにばかならない。コンピュータについても同様である。
 さて、ここから先、私とワイゼンバウム教授とは意見が異なる。747の墜落の場合にはヽ
その責任をとる主体が必ずどこかにある。航空会社かもしれないし、ボーイング社かもしれな
い。それと同様に、コンピュータを使う企業も、これからはコンピュータについて一から十ま
での知識を持つ責任がある、というのが私の考えだ。このコンピュータに何ができるのか、故
障が起こるとすればどうぃうふうに起きるのか等々といったことである。その上で責任をとる
義務があるはずだ」

      • 防衛システムでは、事故が起こってからでは手遅れだと思うが?

 「コンピュータの故障などが原因で、偶発的に核戦争が起こるという可能性は少ないだろう。
核戦争の恐ろしさも十分わかっているし、人間はそれほど馬鹿ではないから、もし故障があっ
ても事前にキャッチできるはずだ。事実、最近、米国の防衛システムが故障したが、あれもコ
ンピュータ・システムの故障ではなく、単に素子に欠陥があったためだと判明している。もち
ろん、こんなものを信頼したという点で、これも人間の犯した誤りであるということに変わり
はない。
 では人間が意識的に核戦争を起こすかどうかと問われれば、私は楽観主義者だと言わざるを
得ない。人間が正気である限り、あるいは世界の指導者が正気である限り、核戦争を始めるこ
とはないだろう」




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