マサチューセッツ工科大学(MIT)教授 マイケル・ダーツゾス7

     ロマンチストの夢、ロボット
   
 中国訪問は実規したわけだか、ダーツーゾス教授の持つ夢のうち、未だ実現していない夢は
どんなものだろう。ロボットエ学の権威としてSFに登場するようなロボットの製作なども夢
怯も人肋の知能、機械の知能ということについて、自分なりにずい分考えたつもりである
見ているのではあるまいか。
「こういう漢然とした問題を分析する時、ギリシヤ的な教育がものをいうのではないかと思う。
私も人間の知能、機械の知能ということについて、自分なりにずいぶん考えたつもりである。
端的に言って、機絨の知能についての答は出ていない。機械が限りなく利口になるという夢を見
ることはできるが、科学はそれが可能だということさえ立証していない。例を取ろう。1955
IBMを訪ねたことがある。『イチ、二、サン』とある機械の前で声を出すと「1、2、
3」と数字がクイプされる装置ができていた。あと二、三ヵ月で、人間の言葉なら何でも、声
を聞いただけでタイプできる機械が完成するという話だった。ご存知のように、これは25年
後の今日でもまだ完成していない。しかも、この音声認識は人間の認識活動のほんの一部であ
る。人間の赤ん坊は、入生の初めの100分の一くらいの段階でこのレベルに達する。コンピ
ュータがこの段階に達し、パターン認識が可能になったとしても、そこから思考というレペル
に到達するには大きなギャップがある。常識とか感情はそのもっともっと先になる」
 いずれにしろ、ロボットが仮に現実のものになるにしろ、それは、遠い未来のことになると
いうわけだ。
 ひるがえって歴史から教訓を得ることもできるわけだが、ダーツーゾス教授の場合には、も
ちろんギリシャから始まる。
 「例えば、プラトンの時代の人々は、脳の働きを完全に理解できたと考えていた。ちょうど水
時計が作られ、その仕組みが完全に理解できたから、脳もそれと同じように慟くものだと信じ
ていた。もっと下って、フロイトの時代には水力学が一世を風麿した。それに影響されて、脳
の働きを水力学的に理解できたと考える人が多くなった。最近ではノーバート・ウィーナーが、
脳は制御システムのように働くと信じて、サイバネティックスという学問を作った。だが、現
在の知識では、こうした考え方がみな誤りだったことが分かっている。にもかかわらず、現在
のわれわれの考え方は正しいと主張するのは傲慢ではないか。私は科学者として、もう少しヘ
り下った態度を取りたい。
 私も一ロマンチストとしては、SFに登場するようなロボットを夢想するが、科学的には、
人聞に近いロボットができるともできないとも断言できない」

万一できたらどうなるか、考えたことがあるなら、その桔論を聞かせてほしい。
「どうしても意見を述べろというなら、人間の知恵は機械を支配するのには十分なものだと言
っておきたい。終局的には、人間と機械ば異なっている。人間は空腹になると、それを感じて
『腹ペコだ』と言う。機械用のプロダラムを書いて、ある状態になったとき、機械に『腹ベコだ』
と表現させることはできる。しかし、その二つの表現はまったく次元の異なるものである。
 この違いがものをいうはずだ。
 そう信ずる以外、道はないのかもしれない。散文的に解釈すれば、現時点でベストを尽くし
て、次の世代に夢を託すということだろう。
−−−−最後に、アレキサンダー大王への惶れはどうなったのか?
「娘(13歳に)アレキサンドラという名前を付けた」

    インタビューを終えて

 すべてを人種とか国籍に帰することで問題が解決するわけではないが、ボストン市周辺そし
てボストンをその中心とするマサチューセッツ州においてギリシャアメリカ入の影響力が強
いこともたしかである。現にマサチューセッツ州のデュカキス知事、ツォンガス上院議員(各
州から選出される上院議員は二人だが、もう一人は有名なケネディ上院議員)、このインタビュ
ー・シリーズにも登場願うMITのネグロポンテ教授など、錚々たる人物が揃っている。
 その中でも、ダーツーゾス教授は日本の第五世代コンピュータに対抗するためアメリカの頭
脳を結集すべく大車輪で活躍中である。もちろん、第五世代コンピュータヘの理解も深い。統
率力、思素の深さといった点からも人望がある。日本にとっては手強い相手だが、「人間は万物
の尺度」(ギリシャの哲学者プロタゴラス〈500〜430B・C〉の言葉)と喝破したギリシ
ャの伝統を身につけた人である。あくまで人間を中心にすえての議論になれば十分話が通じる
人でもある。
 彼が中心になってアメリカのコンピュータ科学界が・”第六世代”のコンピュータを案出する
ことになるのかどうか−−−−いずれにせよ大向うをうならせる対策を打ち出すことに間違いはな
いだろう。

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