マサチューセッツエ科大学(MIT)教授 ジョール・モーゼス3

 その結果、ある意味で1970年代のコンピュータ社会を総括する、幅の広い本ができた。
ペーパーバック版や訳書も各国で出版されたわけだが、何かつけ加えることがあるのではなか
ろうか。
 「まず最初に、基本的方向は変わっていないことを断っておきたい。つまり、マイクロ・エレ
クトロニクス革命が社会全体に深く影響を与えるだろうということ。その中でも、コンピュー
タ・サイエンスの外の世界、つまり応用面だがヽそこで起きることが社会に大きな変化をもた
らすだろうということだ。しかしふり返ってみると、『ザ・コンピュータ・エージ』の中で見逃
したことが三点ある。第一に、工業用ロボットの重要性を実際より軽く見たこと。ダーツーゾ
ス教授の論文は優れたものだが、ロボットを使っての産業革命が予想以上に早く進んでおり、
社会に与えている影響もかなり大きい。この点に、もう少し重きを置いても良かったと思う。

 第二に、ますます小型になっているマイクロプロセッサー・チップについての焦点が少しぼ
けた。チップの小型化が社会に大きな影響を与えるだろうとは予想したのだがヽチップを設計
する段階で、コンピュータのソフトウエア研究がこれほど大切だということには気がつかなか
った。最後に、コミュニケーション(通信)の重要性について十分理解できなかった」
 モーゼス教授は1941年に今のイスラエルで生まれ、13歳の時アメリカに移住。ニュー
ヨーク市のコロンビア大学で学士号と修士号を取得した後ヽ 1967年にMITから博士号を
授与されている。その後MITの助教授・准教授を経て、1977年に教授。以来、ずっと教
育と研究に従事してきている。
電話でインタビューを中し込んだ時には、[2時間なんてとんでもない。それに自分の話は長
くなればなるほどボロが出るから」という返事をもらった。ことによったらインタビュー嫌い
なのではあるまいかと心配したのだが、それは杞憂であった。ある意味でとてもインタビュー
しやすい人である。話の途切れることがなく、こちらは黙ってその話を聞いていても良いから
である。うっかりすると、全くモーゼス教授のペースに巻き込まれたまま、御託宣を受けただ
けで帰って来ることにもなりかねない。ともかく最少限度の質問だけはしたものの、モーゼス
教授の独演に近いインタビューになってしまった。

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