秋葉忠利 著書 “顔”を持ったコンピューター 第3章

 いまから25年前、当時一流のコンピューター科学者10人に秋葉忠利がインタビューしてコンピュータの未来と人間の将来について書き上げたものです。シーモア・パパートの続きです。

ピアジエ十コンピュータ=パパート?
マサチューセッツ工科大学(MIT)教授
シーモア・パパート
Symour A. Papert


       コンピュータ文化    

 「私たちの目前には大きな文化的変化が待ちかまえている。それはコンピュータが媒体となっ
て起こりつつある。近いうちに、社会のあらゆる面でコンピュータが使われるようになるだろ
う。しかも、この変化を止めることはできないと思う。だが、そうした大きな変化という流れ
にうまく乗って、ほんの少し、たとえ二次的なオーダーでよいから文化の流れを良い方に変え
ることは可能だと思う。
 そのために教育環境を改善することが焦眉の課題になる。学校教育は、自然な環境の中でう
まくいかなかったことを矯正するための場と考えるべきだから、学校以外の場で子供たちのま
わりにある環境をよくすることが主要な問題である」
 だがそれがうまくいって、多くの子供たちがLOGOを使えるようになり、亀に幾何学模様
を描かせて数学を学ぶようになったとしよう。数学嫌いがいなくなる代わりに、それに代わる
新たな問題が生にる危険はまったくないのだろうか。
 「ワイゼンバウム教授もそうした危険のあり得ることを指摘しているが、はっきり言ってそう
した危険性もたしかにあるだろう。
 私たちは今、歴史的な曲り角にさしかかっている。人類は遺伝子を組み替える技術を持ち、
原子の構造に手を加える術も発見した。現在、コンピュータを使って子供たちのまわりにある
真の教育環境を改変することが可能になったという事実は、それらに匹敵する出来事だと言え
 その結果、次の世代の子供たちの多くが精神異常を未たす危険性もあり、知的に強力な人間
になる可能性もある。だが、そのどちらかになるかを決定するのはコンピュータそのものでは
なく、コンピュータを取り巻く人間なり社会なのである。コンピュータ文化と言ってもよい。
 だから、私がいま一番興味を持っているのは、コンピュータ文化がどのように形成されるか
ということであり、それを調べるための実験を世界各地で行いたいと考えている。それも10
年先では遅い。今の勢いが続くと、10年後にはアメリカ、日本、イギリス、フランスなどの
国ではマイコンやビデオ・ディスクがかなり普及するだろうからだ」
 精神異常の子供たちが社会に充満するのはたしかに大問題である。ではどういう実験をして
この辺の事情を研究するつもりなのか。もう少し具体的なことを知りたいと思うのは、筆者だ
けではないだろう。

広島ブログ
秋葉市長が25年も前にコンピュータ時代を予測して、当時の最先端科学者をインタビューした本です
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