秋葉忠利著書 “顔”を持ったコンピューター
いまから25年前、当時一流のコンピューター科学者10人に秋葉忠利がインタビューしてコンピュータの未来と人間の将来について書き上げたものです。第4章、建築機械(アーキテクチュア・マシン)グループの若親分、ニコラス・ネグロポンテのインタビューです。
建築機械グループ(アーキテクチュア・マシン)の若親分
マサチューセッツエ科大学(M‐T)教授
ニコラス・ネグロポンテ
Nicholas P.Negroponte
メディア・ルーム
デモンストレーションに魅力が足りなかったわけでもないのだろうが、いつまで待っても「海
軍さん」は現われない。結局海軍グループ不参加のままヽこれまでの研究成果を見せてもらう
ことになった。
まず初めに ″ Media Room(媒体室)″ でSpatial Date-Management System(空間データ・
マネジメント・システム。略してSDMS)を″体験″する。
この部屋は約20畳の広さで、正面の壁はほぼ全面スクリーンである。その裏には部屋がも
う一つあり、そこに置かれた映写機でいろいろな像がこのスクリーン上に映し出される。音声
は部屋の四隅の天井と床に各一個ずつ据え付けられた8チャンネルの立体音響システム。映像
に応じてドップラー効果を再現することもあるという。しかし、最も重要なのは部屋の中央に据
え付けられたイームズ・チェアである。本物は1,000ドル以上もするこの肘掛椅子は、その名
の通りチャールズ・イームズ夫妻の設計になるもので、芸術家やインテリの一部では「夢の椅子」
とまで評価されている。並のコンピュータ技術者なら、こんな高価な椅子は使わないだろう。
その両肘には、ジョイステイックと呼ばれるコントロール用のスイッチが付いている。これ
を前後左右に動かして、データに「近づく」わけである。さらに、この椅子をはさんで、一九
インチのカラーCRTが二台置かれている。その画面を押して、指圧によるインプットもでき
るようになっている。
さて左側のCRT上には極彩色で10個の長方形が並んでいる。各長方形の中には、卓上日
記とか、ニューイングランド地方の地図、小型電卓、電話帳、電話、テレビ、SDMSの説明
書といったものの写真や絵が映っている。これがいわば、利用できるデータの一覧表なのだが、
データランド(データの国)と呼ばれている。使えるデータを示す「地図」と考えればよいだ
ろう。正面スクリーンにももちろん写真や絵が映る。その正面スクリーンとデータランドとの
関係は、データランド上にある灰色の四角で示される。データランド上のこの灰色の四角で覆
われている部分が、正面スクリーンに拡大されて映されるのである。
では正面スクリーンの写真や絵を別のものに変えたいときは、どうすればよいのだろう。答
は簡単。灰色の四角を動かせば良いのだが、それには二つの方法がある。
第一の方法は正面のスクリーンに映し出したい物をデータランド上で探して、それを指で押
すというものである。例えばデータランド上のSDMS説明書の絵を押すと、正面スクリーン
には、SDMS説明書の絵が映る。同時にデータランド内の灰色の四角もSDMS説明書の上
に移動する。もう一つの方法は、左肘に付いているジョイスティックを前後左右に動かして、
灰色の四角が説明書を覆うようにするというものである。
秋葉市長が25年も前にコンピュータ時代を予測して、当時の最先端科学者をインタビューした本です
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