秋葉忠利著書 “顔”を持ったコンピューター 第4章

いまから25年前、当時一流のコンピューター科学者10人に秋葉忠利がインタビューしてコンピュータの未来と人間の将来について書き上げたものです。第4章、建築機械(アーキテクチュア・マシン)グループの若親分、ニコラス・ネグロポンテのインタビューです。


建築機械グループ(アーキテクチュア・マシン)の若親分
    マサチューセッツエ科大学(M‐T)教授       
    ニコラス・ネグロポンテ
       Nicholas P.Negroponte 

  SDMS

これだけなら、画像の大きさが違う二つの画面があるだけで何のおもしろみもないのだが、
右肘に付いているジョイスティックを前方に押し続けることによって、「この説明書の中に入り
込むことができる」ところにSDMSの存在意義がある。ジョイスティックを前に倒すと、正
面にはこの説明書の目次が現われ、同時に右側のCRTにも説明書の目次が映し出された。次
に右肘のジョイスティックを左側に倒すとヽ正面のページが繰られ第一ページが現われ、右側
のCRT目次上の「序論」という文字の色も変わった。どの部分を読んでいるのか一目瞭然で
ある。
 このページを読み終わったらヽジョイスティックを押して、次のページをめくることになる。
紙でできた本を読むのと似た形式だが、この形式を選んだのにはちゃんとした理由がある。
「本を読むということは、その中のアイデアを吸収するということだ。しかもアイデアは段落
とか一ページとかいった単位でまとまっていることが多い。したがって、アイデアを理解する
ためにはページ単位で読んでいく方が能率がよい。その上、今何ページ目を読んでいるかとい
うデータは、一冊の本の中であるアイデアがどういう位置を占めるのかという指標にもなって
いる。後で使いたいアイデアがあっても、あれは何ページにあったというふうに覚えていられ
るから便利でもある」
 ある部分を飛び越したり、後に戻ったりすることももちろん可能である。例えば「音声」と
いう章を読みたい場合、右側のCRT目次上の[音声]という部分を押せばよい。すると正面
のスクリーン上にはその章の冒頭の部分が現われるということであったが、残念なことに、こ
の機能は故障中であった(右側のCRTに触れると全システムがダウンするということだっ
た)。
「このメディア・ルームだけでコンピュータを四台使っている。パーキン・エルマー社製で、
512Kバイトのもの二台と、265Kバイトのものが二台だが、コンピュータ1台について
約10台の周辺装置を使っているので、その全部を完全に作動させるのはちょっとした芸当だ」
そうである。
 次にデータランド上の灰色の四角を電話機の写真まで動かしてみた。正面スクリーンと右の
CRTには、プッシュ・ボタン式の電話機が映る。
 CRTに映った電話機のボタンを押すことによって実際に外線とつながり、CRTの近くに
あるマイクロフォンと八個のスピーカーを使って、相手と話をすることもできるそうである。
故障のため、CRTスクリーンに触って試してみることのできなかったのが、本当に残念であ
る。
 また「同様に卓上計算機を画面に出せば、右側のCRT上の計算機のキーを押すことで、実
際の計算もできる」とのことである。
 最後に、テレビ受像機に灰色の四角を移してみた。正面のスクリーンにはテレビ受像機が現
われるが、この受像機を「使って」テレピの番組を見ることができる。ジョイスティックを前
方に押すと、「刑事コロンポ」が始まった。音声は英語と日本語のどちらを選んでもよい。ビデ
オ・ディスク研究者の間では、「この日本語版刑事コロンポは今や古典」だということである。

広島ブログ
秋葉市長が25年も前にコンピュータ時代を予測して、当時の最先端科学者をインタビューした本です
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