秋葉忠利著書 “顔”を持ったコンピューター 第4章

いまから25年前、当時一流のコンピューター科学者10人に秋葉忠利がインタビューしてコンピュータの未来と人間の将来について書き上げたものです。第4章、建築機械(アーキテクチュア・マシン)グループの若親分、ニコラス・ネグロポンテのインタビューです。


建築機械グループ(アーキテクチュア・マシン)の若親分
    マサチューセッツエ科大学(M‐T)教授       
    ニコラス・ネグロポンテ
       Nicholas P.Negroponte 


    進行中の研究

 昼食はMITの西端チャールズ川を隔ててボストン市を望むハイアット・リージェンシー・
ホテルの最上階、回転グリルでということになった。ネグロポンテ教授のほか、リップマン教
授、スティーブ・グレゴリー教授、ベンダー氏それに大学院の学生ウィリアム・ドネルソン君
と相沢氏という顔ぶれで総勢7人になった。
 MITからホテルまで徒歩10分。その間現在進行中の研究についてネグロポンテ教授に説
明してもらった。
「今、建築機械グループで手掛けている研究は4つに分けられる。まず第一が、テレコンフェ
ランシング(遠隔会議)の研究である。この面では大規模な研究が始まったばかりだが、世界
的に遠隔コミュニケーションが盛んになりつつあるという傾向を反映している。それともう一
つ大切なのは、今までの機械対人間という形のコミュニケーションでなく、機械を使って人間
と人間がコミュニケーションを行うことに重点が移っていることだろう。
 第二は、われわれがヒューマン・インタフェースと呼んでいる面での研究である。その中で 
も “ Put lt There(それを、そこに置け) ” という研究が大事なものだろう。さっき見たメディ 
ア・ルームにNECの音声認識機DP-100とバーモント州にあるポルヒマス・ナビゲーショ 
ナル・サイエンス社の位置方向探知機も据置してある。例のイームズ・チェアに座って、例え
ば “ Put it there ” と言いながら指で「it(それ)」とは何か、また「there(そこ)」とはどこか 
指し示すと、画面上の丸なり四角なりが元の場所から消えて、指示された場所に現われる。音
声と動作を組み合わせた結果、人間と機械の間のコミュニケーシの精度は98パーセント
にまであがった。
三番目は “ Thinking in Color ” と呼んでいるが、内容はまだはっきりしていない。色彩とい 
う観点からわれわれの環境を見直して、人間の創造性を引き出すために、あるいは毎日の生活
をよりよくするために「色」を使えないか、といったようなことを考えている。                           
 最後は、映画とかテレビをもっとわれわれ個人個人にとって近いものにする研究だ。「手造り」
の味といってもよい。それにはビデオ・ディスクを使うわけだが、例えば「自転車の修理法」
といったような映画を作るにしても、右利き用、左利き用といった多種類のものを個人に合わ               
せて作り、かつあるこまを止めて、その背後にある情報を利用できるようにもする。
 あるいは「ページのない本」というものもおもしろいだろう。メディア・ルームで見た説明
書を思い出してもらえばよいが、ビデオ・ディスクには、テレビの五万こま分をランダム・ア
クセスできる形で収めることができる。ブリタニカ百科事典もこの中に入ってしまう」 


広島ブログ
秋葉市長が25年も前にコンピュータ時代を予測して、当時の最先端科学者をインタビューした本です
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