秋葉忠利著書 “顔”を持ったコンピューター 第7章

いまから25年前、当時一流のコンピューター科学者10人に秋葉忠利がインタビューしてコンピュータの未来と人間の将来について書き上げたものです。今日は第7章、ロジャー・シャンクへのインタビューです。

          人工知能に賭けるエールのボス
    エール(YALE)大学教授  ロジャー・シャンク Roger C. Schank


      進行中の研究    

 前述のように、言語理解に、言語に依存しない“インター・リンガル”が必要なこと、暗黙
の仮定が重要な役割を果たすことに筆者は大方賛成だが、本当に言語に依存しないものか疑問
に思う。こうした点については、AI批判の立場から多くの研究がなされているが、それを紹
介するだけのスペースがない。とりあえず先を急ごう。現在エールのAI研究所で取り組んで
いる問題は、より具休的にどんなものなのか聞いてみた。
「ここ数年エールのAI研究所で推進してきた研究は、四つの分野に分けることができる。第
一はFRUMP(Fast Reading,Understanding and Memory Program)だ。パーリス教探の
説明にもあったように、テーマを限れば新聞を実用的なレベルで読み、要約かつ翻訳するニと
もできるプログラムだ。UPIのターミナルからニュースを受け、50くらいの決まったテー
マについての記事を拾い上げて読むことができる。テーマの中にはテロとか地震、ハイジヤ
ック、エネルギー危機といったものが入っている。翻訳できる言語は今のところ5つ6つだが、
今、中国語のできる大学院生が中国語への翻訳プロダラムを書いている。第二の部門は機械翻
訳だ。最近、政府の研究援肋が復活して、NSF(国立科学財団)の後押しでこの研究を続け
ている。前にも述べたように言語に依存しない表現というモデルを作って翻訳をしているが、
訳すだけでなく、読んだことを一般化することもできる。例えば、テロについての話を100
読んだとする。次にアイルランドで誘拐事件が起こると、それはIRAが係わっている、イタ
リアで誘拐が起これば、誘拐されたのはビジネスマンだろうといった予想ができるようになる。
いわば読み訳すだけでなく、学習もするプログラムである。現在進行中なのは、スペイン語
UPIニュースを英語に直すものだが、FRUMPと同じ哲学だから、言葉が何語でも問題は
ない」
「これとは少し趣が異なるが、中国人の学生が英語と中国語の格言の比較翻訳をしている。格
言の多くは文字どおりの意味のほかに、比喩的意味を持っている。こういう場合にはこうすべ
し、ああすべきでないといったことだが、格言そのものが大切なのではなく、高度に凝縮され
た言語表現を理解することによって、言葉を理解するとはどういうことなのかもう少しよく分
かるようになるだろうという意図を持っている。第三番目は、学習するプログラムだ。人間は
誤りを犯したり、失敗した経験から学ぶことができる。それと同様、期待どおりに事が運ばな
かった場合、それを指針にして記憶の内容を変えて行く。期待がはずれると、以前にもそうい
った経験があったかどうか調べて、もし同じ失敗を何度かしていれば、それ以後、別の期待を
持つようにする。これをダイナミック・メモリー(動的記憶)と呼んでいるが、6ヵ月もする
と初めのものに比べて記憶内容が似ても似つかないものになっていることもある」
「最後に会話型プログラムがある。現在進行中のプログラムは、アラブとイスラエルの間の対
話がどんなものになるかをモデル化したものである。双方の持つ信念の違いをきちんと定式化
して、あとは会話を続けられる能力があればよい。片方のいい分に対して、その議諭は、これ
これしかじかの理由で間違っている、といった主張が出てくることになる。最終的にはこれを
もっと強力にしていって、人間と機械が英語で自由にやりとりのできるようにしたいと思って
いる」

広島ブログ
秋葉市長が25年も前にコンピュータ時代を予測して、当時の最先端科学者をインタビューした本です
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