秋葉忠利著書 “顔”を持ったコンピューター 第7章

いまから25年前、当時一流のコンピューター科学者10人に秋葉忠利がインタビューしてコンピュータの未来と人間の将来について書き上げたものです。今日は第7章、ロジャー・シャンクへのインタビューです。

          人工知能に賭けるエールのボス
    エール(YALE)大学教授  ロジャー・シャンク Roger C. Schank


     コンピュータを大統領に 

「実はそれを一歩進めて、アメリカの大統領にはコンピュータがなるべきだと思う。これまで
のやり方で選ばれた大統領を見ると、テレビ映りがよいとか、演説がうまい、あるいは多くの
人に愛敬を振りまくことができるといった点ではたしかに優れてはいるが、大統領に要求され
る知性、知恵とはあまり関係がない。国務長官も同じことだ。それなら、例えば外交のことに
ついては人間より博識なコンピュータの方が、はるかに合理的な決定をくだせるはずだ。選挙
も単なる人気投票ではなく、重要な問題についての国民の意見を汲み上げるため、人工中絶に
贅成か反対か、アラブとの関係はどうするなど、論点ごとに議論をしていく。その結果に沿っ
た政策決定をコンピュータが行うということになる。 これは夢物語ではない。POLITICS
というプログラムがある。このプログラムは、保守的あるいは革新的な視点を前もって与え
られており、新聞の政治面の記事を読んでそれに対する意見を述べることかできる。保守系
保守系、革新なら革新で、本物の上院議員とそっくりの意見を述べたのには驚いた」
・・・・・意思決定者として人間とコンピュータのどちらが上かということではなく、たとえ人間
の方が誤った決定をくだす率が多くとも道徳的、宗教的あるいはそれ以外の理由で、人間だけ
が行うべき仕事というものがあるのではないか。
「たしかにその点は議論すべき事がらだ。コンピュータを大統領にというのは半分冗談だが、
コンピュータを積極的に導入すべき仕事はいくつもある。例えば、“コンピュータ教師”だ。理
想的な状態では人間の先生の方がよいに決まっている。しかし、現状を見ると、先生一入一人
の資質は理想からかけ離れている。それなら、読み書き算数ともにコンピュータから教わった
方が生徒は幸福だ。もちろん人間の先生は喧嘩の仲裁とか、操り人形を生徒と作る、あるいは
温かい母親の役割を果たすといったもっと人間的なことをする。
 ワイゼンバウム教授は、コルビー教授の機械による精神医療にも反対している。世界中の人
がみな裕福で、精神科医がみな優秀なら問題はない。しかし、精神科医に診てもらいたくても
貧しくて診察料の払えない人がいる。それなら、ターミナルをあちこちに設け、機械の前に座
ることで安価に治療を受けられる方がはるかに有益だ。しかも、コンピュータのモデルには最
高の医師を使うことができる。どこでもどんな山奥でも最新最高の医療技術の恩恵を受けるこ
とができる。よいことずくめではないか」

広島ブログ
秋葉市長が25年も前にコンピュータ時代を予測して、当時の最先端科学者をインタビューした本です
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