秋葉忠利著書 “顔”を持ったコンピューター 第7章

いまから25年前、当時一流のコンピューター科学者10人に秋葉忠利がインタビューしてコンピュータの未来と人間の将来について書き上げたものです。今日は第7章、ロジャー・シャンクへのインタビューです。

          人工知能に賭けるエールのボス
    エール(YALE)大学教授  ロジャー・シャンク Roger C. Schank


 将来の研究方向・研究方法


・・・・・将来どんな方向の研究を手がけるつもりなのか。
 「自己統御的なシステムを作ることに興昧がある。現在のデータベースは“バカ”だから、キ
ーワードが一致しないとデータが拾えなかったり、データが増えると収拾のつかないことにな
ってしまう。データベース自身が自分に適した整理の仕方をして、使う方の人間は普通の言葉
を使ってデータを検索できるようになることが目標だ。しかし、こうしたものも一過程として
は大事だが究極的には創造性、つまり新しいアイデアを産む力あるいはその背後にある意識と
いったものを持つプログラムの作成が目標だ」
・・・・・AI研究に使う方法論、あるいは道具だてといったものはどんなものなのか。
 「新しいアイデアをプログラムとして表現するのがわれわれの仕事だが、まず観察・分析から
始まってある理論を作り、その理論のモデルとしてアルゴリズムを作るわけだ。このモデルか
うまくいかないと、理論の方に手を入れる。それにしたがってモデルが変わり、実行してみて
云々と、いたちごっこが始まることもある。しかもプログラムの規模はとてつもなく大きいか
ら、そのうちにわけがわからなくなる。もっとも人間の思考もしばしばこういう状態になるよ
うだが……」
・・・・・すると心理学との差は、心理学で実験とか観察をする代わりに、AIではプログラムを
実行する点だと考えてよいのだろうか。
 「われわれのチームには心理学者もおり、心理学の研究成果にも常に注意を払っている。われ
われの作った理論の反証となるようなものに対しては、特に注意を払う。だが、心理学とAI
の違いとは心理学が人間をテストするのに対して、われわれはアルゴリズムをテストするとい
う点だろう」
・・・・・人工知能という以上、人間の知的活勤をプログラムするということだろうが、それが成
功したという判断はどうくだすのか。
 「人間と自由に会話のできるプログラムがいくつもあって、そのうちどれが一番人間らしいか
という判断をするまで研究が進んでいないから、とにかく人間と自由に話のできるプログラム
ができればそれで成功だ」
・・・・・〃自由に話のできる〃と言えるためには、どの程度話せればよいのか。
「それは簡単だ。今ここで私たちが話しているのと同じに、何から何まで人間なみにできるこ
とを言う」
 話が堂々巡りを始めそうな気配が出てきたので話題を転換、趣昧とか家族といった個人的な
データを探ることにした。


広島ブログ
秋葉市長が25年も前にコンピュータ時代を予測して、当時の最先端科学者をインタビューした本です
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