秋葉忠利著書 “顔”を持ったコンピューター 第7章

いまから25年前、当時一流のコンピューター科学者10人に秋葉忠利がインタビューしてコンピュータの未来と人間の将来について書き上げたものです。今日は第7章、ロジャー・シャンクへのインタビューです。

          人工知能に賭けるエールのボス
    エール(YALE)大学教授  ロジャー・シャンク Roger C. Schank


 インタビューを終えて

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 以前と同じく、いやそれ以上に早口で「記憶と学習についての研究を続行中。その成果を
Dynamic Memory(動的記憶)という本にまとめた。内容はこれまでの研究の総まとめと言え
るだろう」というのが、研究面におけるシャンク教授の近況だが、この本の中心になっている
のは、(実世界に例を取った)彼の研究室で進行中のプロジェクトである。例えば、裁判官があ
る事件の判決をくだす。その背後にある論理構造やデータ処理の仕方をコンピュータで再現し
ようという試み。フットボールのコーチが試合中、どんなサインを出すかといった決定の研究。
中国料理の料理法についても、これまでの料理法の背後にある論理構造を理解することによっ
てコンピュータが新たな料理法を創り出すことになるかもしれない。旅行代理店の仕事につい
ての論理構造も研究中だという。
 裁判官がどんな考えで判決をくだすのか裏側からのぞくことには誰でも関心があるだろう
が、仮にコンピュー夕が判決をくだすようなことになると世の中はどんな風に変わるのだろう
か。ここで「たとえコンピュータにできることでも、コンピュータにさせてはいけない仕事」
があるというMITのワイゼンバウム教授の言葉が思い起こされる。         
 研究面以外では「最近、AI(人工知能)研究の成果をソフトウエアの形で売リ出す会杜を
設立した。今のところ15人くらいのスタッフで精力的に動いているが、まだ日本からの注丈
はほとんどない」
 エール大学のコンピュータ科学科のChairman(主任)としての活躍も続いている。
 「良いチェアマンであったかどうかは他人に評価してもらうことにして、アグレッシブ(精力
的・積極的)なチェアマンだということはよく言われる。とにかく、予算・施設・スタッフす
べての面でかなりの成長を見たことは確かだ」
 シャンク教授が今後とも企業家として、AI研究者としてまた教室主任として、縦横に活躍
を続けることには間違いがない。その上、マスコミにも好かれ、一般的な知名度もずい分高く
なってきている。まさにアメリカのコンピュータ科学界を代表する俊英の一人である。




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秋葉市長が25年も前にコンピュータ時代を予測して、当時の最先端科学者をインタビューした本です
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