秋葉忠利著書 “顔”を持ったコンピューター 第8章

いまから25年前、当時一流のコンピューター科学者10人に秋葉忠利がインタビューしてコンピュータの未来と人間の将来について書き上げたものです。今日は第8章、マービン・デニコフへのインタビュー、海軍研究所(ONR)についてです。長文なので、今日と明日の2回に分けています。

        コンピュータ科学の演出家

米国海軍研究所情報科学部長 マービン・デニコフ Marvin Denicoff


      ONR(1)
  
 と言われても、軍がスポンサーになって科学の研究を行うというシステムは、日本に馴染みの深いものではない。そこでONR、特に情報科学部の仕事から話を始めてもらった。
 「われわれの仕事は、大学や民間の研究所で行われる基礎研究に補助金を与えたり、契約によって研究を委託することである。情報科学部で扱うのは主にコンピュータ科学だが、一ロにコンピュータ科学といっても、われわれの考えているのは新しいアーキテクチュア、ソフトウエア、AI(人工知能)、分散処理、人間・機械間のインタフェースといった分野である。
 さて通常、研究補助の申請は研究者側が自発的に行うが、学問的におもしろくかつ新しいアイデアを研究計画書という形で提出してもらう。その中には研究者の能力を示すこれまでの業績、研究方法、要員、費用などの概要も含まれる。申請書は年中受理しているが、毎年数百件の申請がある。次にこれを審査・評価して合格、不合格、保留の三種に分類する。。〃保留〃に属する研究については、こちらから出向いたりあるいは研究者にONRまで来てもらって、さらに細かい点まで検討した上で合格・不合格を決めることになる。その結果、典型的な研究では3年から5年の間研究の補助をすることになる。
 ONRの特徴としては、まずその柔軟性をあげることができるように思う。研究計画の評価を行う場合、同じ分野の研究者による審査、あるいは研究の行われる現場での〃実地検証〃をするのが標準的なやり方だが、ONRではこうした手続きなしで研究を補助することに決めてもよいことになっている。これには二つの利点がある。まず、なんといっても可否の決定までに時間のかからないこと。それにセミナーとか会議を開いて、リーダーシップをとることができるということだ。仮にある分野なり方向が重要だと思えば、それについての会議のスポンサーになる。さらに、その結果有望だということになれば、研究補助という形で努力を継続することもできる」
・・・・・そうしたことを可能にするためには、かなり多額の費用が見込まれるが、年間の予算規模は?
 「それは公開できない情報だが、毎年60から75件の研究を新規に援助している。ということは、コンピュータ科学の分野でこれはと思われる研究者には、すべてONRの研究費が巡っているということになる」

広島ブログ
秋葉市長が25年も前にコンピュータ時代を予測して、当時の最先端科学者をインタビューした本です
より多くの市民に読んでいただくためにクリックをお願いします。