秋葉忠利著書 “顔”を持ったコンピューター 第8章

いまから25年前、当時一流のコンピューター科学者10人に秋葉忠利がインタビューしてコンピュータの未来と人間の将来について書き上げたものです。今日は第8章、ソフトウエアの1と2です。

        コンピュータ科学の演出家

米国海軍研究所情報科学部長 マービン・デニコフ Marvin Denicoff

ソフトウエア
    
 1ソフトウエア・メトリックス
「ソフトウエアには、当然深い関心を持っている。今一番必要なのは、ソフトウエアに科学的
基礎を与えることだろう。ソフトウエアの進化史を見ると、秘術・芸術といったところから始
まって、現在ではよくて工学の一分野である。それを何とか科学に近寄せたいのだが、そのた
めにはソフトウエアの基本原理といったものを確立しなくてはならない。実験のために何を測
ったらよいか、どう測るかを見つけて、最終的にはソフトウエアの本質的性格はどのようなも
のか理解することが目標である。
実は一年程前からエール大学のアラン・パーリス教授(第六章で紹介)を中心に研究委員会
を設け、ソフトウエア・メトリックス(Software Metrics‐‐‐ソフトウエアの測定(評価)基準・方法)
についての現状報告・将来の研究課題などを調べてもらった。前出の″探索的″研究の
一例だが、その結果が今度、MIT出版局から同名の書物として出版された。
 測定あるいはメトリックスというような定量化への努力が重要なことを、二つの例で説明し
よう。ユーザーがコンピュータを導入し、ベンダーにソフトウエアを注文する。何年か経って
ソフトウエアとハードウエアがマッチしたとき、ソフトウエアがそもそも初めに考えたとおり
のことをするかどうかという問題が生ずる。できるにしろできないにしろ、それをどのように
証明するかはいっそう難しい問題である。何か欠陥がある場合ハードウエア、ソフトウエア、
ペンダーなどが絡んで裁判になることもあるが、それで法律的決着がついても不満は残る。ソ
フトウエアについての確固としたメトリックあるいは物差しが必要なゆえんである。
 また言語を比べるにしても、一体何を基準にある言語がほかのものより良いと言えるのか。
普通われわれは専門家の意見に頼るわけだが、それも主観的な意見にしか過ぎない。異なった
意見が出てくれば、結局どちらの専門家に信頼を寄せるかという問題になってしまう。これも
定量化・数量化が重要だということを示している」

 2検証
 「それと関連して重要なのは、検証(べqsSに呂)の研究だ。プログラムに誤りがあったり、
守られるべきプライバシーが守られなかったり、コンピュータが原因で原子力発電所の事故が
起きたりするとコンピュータに対しての信頼感が一挙に崩れてしまう。そこでプログラムの正
しさを数学的に検証することが大事になるのだが、この回‥)年間で進歩のあったのは小規膜な
プログラム、単純なものあるいは数学的な内容を持つもので、複雑なビジネス用プログラムと
か大規模なものなどについては、どこから手をつけたらよいのかも分からない状態である」

広島ブログ
秋葉市長が25年も前にコンピュータ時代を予測して、当時の最先端科学者をインタビューした本です
より多くの市民に読んでいただくためにクリックをお願いします。