秋葉忠利著書 “顔”を持ったコンピューター 第8章

いまから25年前、当時一流のコンピューター科学者10人に秋葉忠利がインタビューしてコンピュータの未来と人間の将来について書き上げたものです。今日は第8章、ソフトウエアの6と7
です。



 6 データベース・システム

 [自動的にデータの配列を変えて、記憶や検索がより速くできるようなことを考えている。古
くから知られている数字だが、データに関する質問のうちの85%は、10〜15%のデータ
で片がつく。これはビジネスでも科学的な応用でも同じだろうから、この10〜15%のデー
タを迅速に取り出せるようにすることで能率がずい分違ってくるはずだ」


 7 自動プログラミング

 「自動プログラミングの分野で目指していることは多いが、はるかかなたにある目標は、FO
RTRANとかCOBOLあるいはADAといった言葉を知らない人でもプログラムができる
ようになることである。
 こうした人が入力を定義し、出力の形を指定し、自分のノーテーションで入力から出力に至
る数式なりアルゴリズムを与えるだけで、これを自分でコード化する必要がないようにしたい
わけだ。当然対話的なシステムになるだろうから、入力/出力/アルゴリズムを見てその三者
の間に何か変な所があればそれを指摘する。そうでなければ、PL/I なりCOBOLなり指
定された言語でコードを作り、それで機械が動くことになる。自動プログラミングの実験は、
在庫管理の分野でやっているが、なかなか難しい。五年前には希望を持っていたのだが、その
後の進歩ははかばかしくない。だが、管理職を翻訳者、つまりコンピュータとの間をとり持つ
人間から解放することは非常に大切であり、今後もこの面の研究は続くはずだ。
 ここで、私の今までの経験から得た教訓を披露しておこう。それは、『初期の成功に惑わされ
るな』ということである。自動プログラミングに限らず、適用範囲を狭めて成功した例は枚挙
にいとまがない。しかし、そのほとんどは難しい点を迂回したり、問題が小さいために力づく
でも解決法が見つかったものである。同じ方法をより大きな問題、より複雑な問題に使おうと
しても、そうは問屋が卸さない。まったく別の視点なり方法なりが必要だからだ。これは日本
のコンピュータ関係者へのアドバイスでもある」
 こちらがノートをとる速度に合わせてゆっくりしやべってくれる上、できるだけ詳しく正碓
にという態度で話をしてくれる。「これについてもっと話したいことはあるが、ほかにもまだ話
していない分野があるから」と〃自主規制〃をしてはくれるのだが、コンピュータ科学の全域
にわたって精通している人である。話が長びいて、とうとう半日おつき合いしていただくこと
になってしまった。


広島ブログ
秋葉市長が25年も前にコンピュータ時代を予測して、当時の最先端科学者をインタビューした本です
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