秋葉忠利著書 “顔”を持ったコンピューター 第9章

いまから25年前、当時一流のコンピューター科学者10人に秋葉忠利がインタビューしてコンピュータの未来と人間の将来について書き上げたものです。今日は第9章、ジョゼフ・ワイゼンバウムへのインタビューです。


     愛を説くコンピュータ・サイエンチスト
     <マサチューセッツエ科大学(MIT)教授     

 ジョゼフ・ワイゼンバウム  jaseph Weizenbaum



     三つの問題

・・・・・今、世界あるいはアメリカ、または個入的に大切な問題を三つあげろと言われたら、ど
んなものになるでしょうか?
「まず第一には、第三次世界大戦を防ぐこと。数年前までは、第三次世界大戦への道を歩み出さな
いようにすることが重要だったが、残念なことに世界はすでにその道をたどり始めている。な
んとか世界大戦を避けなくてはと思うが、、西暦2000年まで人類が生き残れるかどうか、疑
問に思う。第二に、アメリカ国内で新しい下層階級ができつつある。ハイ・テクノロジーの恩
恵に浴さない人たち、あるいは銀行預金さえないといった人たちだ。それと、スペイン語を使う
人びとの割合も増えている。実は、このように、国が二つ三つに分かれているのはアメリ
だけではない。アイルランド、中東、イスラエル国内でもそうだし、イギリス、アフリカなど
にも同じ状況がある。アメリカでは米年の夏、あるいは再来年の夏にこの不満が爆発すると思う。
その場合の対応策は当然、警察力ということになるだろうが、その結果後世に禍根を残す
ことになろう。第三に、個人的なことだが、自分がいかに歳とったか切実に惑じている。学生
という若い人たちに囲まれて、生活をしているので気がつきにくいのだが、大学の先生がアメ
リカより尊敬されているドイツで、自分の歳を感じた。
 今日、明日の問題ではないが、やがて子供が全部独立し、大学も退いてアメリカの老人社会
に入るのだが、それに対する心の準備が何もできていない。
 アメリカ社会は、この点で日本に学ぶべきだろうし、その他の問題とも関連させてアメリ
カの老人問題を考えていこうと思っている」
 ・・・・・ところで、ご家族は?
「妻は、小・中学校で心理学のカウンセラーをしていた。ドイツから帰ってきたばかりで、今
のところ仕事はしていない。子供は四入。一番上が26歳。一番下は19歳でまだ大学生だ。
みんなちやんとした人聞に育ってくれた」
・・・・・日本には……?
「行ったことがないし、日本のことはあまりよく知らない。だが是非一度行ってみたい」
・・・・・趣昧は?
「写真とヨット。カメラはニコマートとライカを持っている。ヨットは高くて買えない」
・・・・・最後に若い人たちへのアドバイスを。
「バランスのとれた世界観を持ってほしい。たった一つの技術、たったの一つの視点から見ただ
けで、世界が分かったなどとは夢にも思わないでほしい。人間はコンピュータ以上のものだと
いうことを忘れないように。コンピュータも大事だが、バイオリンも大切だ」


広島ブログ
秋葉市長が25年も前にコンピュータ時代を予測して、当時の最先端科学者をインタビューした本です
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