アメリカ人とのつきあい方 1サマーズ家の日々

      父親の役割

 アメリカの親子関係は30年のあいだにこのように変化しています。親の権威も薄れて
います。しかし、基本的にはアメリカの親子関係はまだまだ健全だと思います。とくに、
日本の家庭と比較するとこの点がはっきり浮びあがってきます。私の身近のアメリ
家庭では、親子間の断絶がほとんど見られません。それは、アメリカの父親の多くが
仕事と家庭のけじめをつけ、家族を優先すべきときには優先しているからなのでは
ないでしょうか。
 夕食は依然として家族全員でいっしょに、楽しくおしゃべりをする時間です。クリスマ
スやサンクスギビングのように、遠くに住んでいる家族が家に帰ってきて近況を伝え合う
習慣はいまでも守られています。土曜、日曜には子どもと遊び、夏休みには家族そろって
長期の旅行に出ることを生きがいにしている父親も多いのです。このような家庭では、
かりに親子間の問題が生じても、同じテーブルについて話のできる素地があります。
 他方、子どもの成長する過程で対話を積み重ねてこなかった父親が、突然思い立って
子どもとの対話をはじめようとしてもなかなかうまくいきません。それぞれ、対話になれて
いないうえ、期待が大き過ぎたり、かつて裏切られた期待がもとになって深い傷を負って
いるからです。まして、親子間に問題が生じていれば、対話をはじめるむずかしさは、
とてつもなく大きなものになります。
 残念なことに、日本の父親の多くは、これまでも、そしていまでも対話を積み重ねない
タイプのようです。私の父もそのタイプだったので、家族そろって真剣に話をすることは
ほとんどありませんでした。アメリカで家族そろって楽しみながら話をする経験をしなか
ったら、私も同じタイプの父親になったかもしれません。もっとも、私の場合、ジミーとは
遠く離れて父親としての義務も十分果していないので大きなことは言えませんが、自分
のことを棚に上げて日本の現状を考えたとき、義務として子どもとの対話をするのではな
く、子どもと過す時間が自分の人生にとって大切なものだと感じ行動する日本の父親が
もっと増えてほしいと思います。


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