秋葉忠利著書  アメリカの学校

             アメリカ人とのつきあい方

           2章 エルムウッド・パーク・ハイ・スクール

                    アメリカの学校


 アメリカの学校はだいたい9月が新学期で、6月の卒業式の後、夏休みに入ります。大
学になると、ハーバード大学は10月に始まり6月に卒業、タフツ大学は9月早々に始まっ
て卒業式は5月、というように、中学や高校よりはスケジュールに幅が出てきます。さらに、
高校でも州や学校によって1年2学期制のところ、3学期や4学期制のところもありますが、
2学期制が比較的多いようです。
 2学期制の場合、1学期が12月か1月までで、つづいて1,2週間の冬休みがありま
す。2学期は6月ごろまであり、その後に3ヵ月ほどの夏休みを迎えます。これも寒い地
域と暑い地域ではちがいます。
 学期以外にも日本とはいろいろちがっているところがあります。まずアメリカの義務教
育年限は「何年生まで」という学年による基準ではなく、「何歳まで」と年齢で決められ
ています。州によるちがいはありますが、多くの州では、16歳まで通学しなければなり
ません。16歳といえば、ほぼハイスクールの2年生に当ります。ですから、ハイスクー
ル2年で中退したとしても、義務教育は終了したことになります。
 10年ほど前、アメリカのテレビ番組で「ハッピー・デイズ」というドラマがありました。
ハイスクールを中退後、社会に出て″クール″に生きているフォンジーという若者が中心
人物の1人で、同じ年齢で高校に通う彼の仲間たちがフォンジーの自由な生活をうらやむ
エピソードが何回も出てきました。マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒
険』以来、アメリカ社会には、学校を中退して自由を追い求める若者を理想化する傾向が
ありますが、このドラマもその一つの現れです。その背景には、ハイスクールを中退して
も義務教育は終了したことになる教育制度があるのです。
 アメリカでは、教育が連邦政府の責任ではなく、各州に委ねられています。したがって、
全部で50ある州のあいだでも、教育制度はそれぞれに少しずつ異なっています。
 日本の制度との開きが大きいのは、たとえばイリノイ州あたりの中西部における小中高
校の分け方です。小学校が8年間、そのすぐあとにハイスクールが4年間というところが
多いのです。
 8年間の小学校はエレメンタリー・スクール、あるいはグレード・スクールと呼ばれま
す。グレードとは「学年」のことで、1年生から8年生までの各学年を「グレード」で呼
びます。ハイスクールになると、学年の呼び名が変って、1年生がフレッシュマン、2年
生がソファマー、それから3年生はジュニア、4年生がシニアとなります。同時に、フレ
ッシュマンを9年生、シニアを12年生という呼び方も残っています。でも混乱はありま
せん。
 また、マサチューセッツ州のボストンの周辺では、小学校が6年、その上に2年間のジ
ュニア・ハイスクール、さらに四年間のハイスクールになります。
 学校の名前のつけ方も日本とはちがいます。日本では人の名前がっいている学校はほと
んどありませんが、アメリカでは、地名か人の名前が多いようです。たとえば、私の息子
ジミーの通った小学校はビショップ・スクールという名前でした。これは人の名前です。
また、詩人の名前がついたウォルト・ホイットマン・ハイ・スクール、あるいは大統領の
名前をとったケネディー・スクールなどはどの州に行ってもかならず1つはある学校の名
前です。
 小学校は原則として歩いて通える範囲内にあるべきだという考え方から、規模の小さい
小学校が多くあります。
 ジミーの通っていた小学校は1クラス15人ぐらい、全校で200人ほどの生徒がいま
した。1学級の大きさは最高24人と法律で決っているので、たとえば25人の新人生が
あると、2つのクラスに分けなくてはならないのです。歩ける距離といっても、それは人
口の多い地域での話で、隣の家まで何キロもあるような地域では、小学生でもスクール
バスに乗って通学します。
 いくつかの小学校の卒業生が1つの高校に入学するのがふつうなので、高校は規模が大
きく、生徒数も多くなります。また、スクール・バス利用がふつうになります。私の通っ
たエルムウッド・パーク・ハイ・スクール(EPHS)は生徒数が約1000人。各ホーム
ルームは20人でした。1つのクラスが教室から動かないで一日中いっしょに講義を聞く
のではなく、生徒が教室を移動して一時間ごとにクラスのメンバーが変ります。
 クラスというと、日本では3年A組といった単位で少なくとも1年間そのメンバーは動
かないのですが、アメリカの高校では、2つの異なったグループを指します。1つは、生
物のクラス、英語のクラスというように授業を受ける単位としてのクラスです。私の受け
た授業のほとんどは20人くらいの生徒がいましたが、タイピングのクラスはもう少し人
数が多く、音楽も混声合唱をするため40人くらいいました。もう一つは、「クラス・オ
ブ・1960」(1960年に卒業する学年)というふうに使われ、一学年全部を指します。
ですから、クラスメートも、この二つの意昧で使われますが、同じ学年だったという意昧
で使われることが多いようです。


広島ブログ