秋葉忠利著書  テスト

             アメリカ人とのつきあい方

           2章 エルムウッド・パーク・ハイ・スクール

                     テスト 
それぞれの課目にはもちろん試験があります。試験も学期末に一度だけではな
く、1学期に何回も行われ、課目によってはクイズとよばれる小テストが毎日、
授業のはじめにあったり、突然なんの予告もなしに行われたりします。もちろんクイズの
ぜんぜんない課目もありました。
 タイピングの授業では、1週間に1度、課題の文章を見て、それをどのくらい速く、か
つ間違いなく打てるかを調べるテストがありました。
 英語の時間にはボキャブラリーのテストが2週間に一ペんくらいありましたし、詩を暗
唱してきて朗読させられることもありました。その結果、ロバート・フロストやカール・
サンドバーグの詩を憶えることができました。本を読んでブック・レポートを出す、つま
り感想文を書いて出す宿題はたくさんありました。時間はかかりましたが、ブック・レポ
ートを書くためにすばらしい本に出会いました。ソーントン・ワイルダーの『サン・ル
イ・レイ橋』、サマーセット・モームの『月と六ペンス』、ハーマン・メルヴィルの『モビ
ィー・ディック』(白鯨)などです。
 試験やレポートの結果が集計されて、A、B、C、D、F(Fはfailー不合格ーのF
です)の5段階の成績のついたレポート・カード、つまり成績表が学期末に手渡されるの
は日本と同じです。また、オナー・ロールと呼ばれる優等生のリストが公表され、学校新
聞にも掲載されます(それまでの私の経験、そしてそれ以後の私の経験に照らしても、な
ぜすべての科目の成績を一本の尺度でまとめて優劣をつけなくてはいけないのか、よくわ
かりません)。
 そのほか、イリノイ州の高校を卒業するためには、州で決めた「憲法についての試験」
をパスしなくてはなりません。連邦政府憲法イリノイ州憲法と二つあって、いずれ
も卒業間際に試験があります。授業中に1、2時間、憲法の条文についての説明はありま
すが、ほとんどが自習です。憲法の条文と解説書を渡されて(そのなかには、本物の試験
と同じようなサンプルも入っています)、試験の期日までにマスターしなくてはならない
のです。
 私は近所に往む級友のアートといっしょに憲法の勉強をしました。約一週間、学校の往
復路、憲法についておたがいに質問を出し合って勉強しました。それが功を奏して憲法
成績はアートが1番、私が2番でした(これは、少し前に書いたことと矛盾しているかもし
れません。でも、2人で一所懸命に勉強して、その結果が認められたことがとても嬉しか
ったのです。1番、2番でなくても、なんらかの形で認められれば、それで十分だったの
です。


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