秋葉忠利著書  デート 

             アメリカ人とのつきあい方

           2章 エルムウッド・パーク・ハイ・スクール

                     デート 
もう一つ、現在の日本の高校でも考えられないものにダンス・パーティ(英語ではふつう
「パーティー」をつけず、「ダンス」と言います)があります。月に一度くらい開かれますが、
生徒会やクラブが主催団体になって、利益が出た場合には活動費にあてます。女性
が男性を誘わなくてはならないターン・アバウト・ダンスが年に一、二回開かれますが、
それ以外のダンスでは原則として男性が女性を誘います。
 ほとんどの場合、学校の体育館が会場になります。伴奏にプロのバンドをよぶと高い
のでヽボランティアのバンドや素人に毛の生えた程度のバンドを頼んだり、レコードを使
ったりします。
 ダンスでも、スポンサー、つまりシャペロンになる先生が、自分のパートナー同伴で生
徒たちの監督をします。
 こういう催しで三〇年前から問題だったのは、洒を飲んで会場に現れる生徒がいる
ことです。そのほかに、タバコを吸っている生徒がいないか、また、最近では麻薬を使っ
ている生徒がいないか、先生はそういうところまで目を光らせなければなりません。ただ
し、三〇年間に問題は、はるかに深刻になっているようです。
 ダンスのほかにもデートの場はいろいろあります。なかでも映画を見に行く、学校の帰
りいっしょに歩く、図書館でいっしょに勉強する、家に遊びに行くなどが典型的なところで
しょう。男女のつきあいで私が感心し、さわやかだと思ったのは、級友たちがはっきりと、
しかも思いやりをもって自分の考えや意志を表現することでした。「ダンス・パーティーには
もういっしょに行く相手がいますが、あなたと友だちになりたいから、図書館でいっしょに勉
強しましょう」とか「お誘いはたいへん嬉しいのですが、いま、ジョンとゴーイング・ステディ
(お互いに他の人とデートをしないと約束してつきあうこと)をしていますから」といった具合
です。しかも、言葉を額面通りに受けとって行動すればよいのですから、とても楽なのです。
 デート以外にも、クラブ活動とか、休憩時間、教会の集りなどでいっしょに、男女が話を
するチャンスはずいぶんありました。
 私は春ごろから英語のクラスの級友何人か(男女半々くらい)と親しくなって、映画を見
たり、読んだ本について話し合ったりしました。その中の一人、フォレストが年代物のT型フォ
ードを持っていたので、放課後、みんなで町中ドライブするようになりました。ノロノロ走って
いる老人の車にマシュマロを投げ込んで逃げたり、駐車違反すれすれの停め方をして、警
察官がくると逃げ出すといった、たわいもないいたずらを毎日のようにくり返しました。いまふ
り返ると、なぜこんな馬鹿げたことに熱中したのかふしぎなのですが、友だちといっしょにいる
楽しさにくわえて、春から夏へと移りつつあった季節も大きな理由だったような気がします。


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