秋葉忠利著書  コロンブス記念日

             アメリカ人とのつきあい方

           3章 アメリカの年中行事

                     コロンブス記念日


アメリカで最初に見たパレードは十月十二日、コロンブス記念日のパレードでした。アメリカ大陸を
発見したコロンブスが一四九二年十月十二日、サンーサルバドル島に上隆した日を記念する日
です。ただしこの日は、全米すべての州の祝日ではありません。この日を祝日にしている州でも、
州の役所は休むが連邦政府の官庁は休まなかったり、酒屋は開いていたりして、全米で文句なく
休みになる七月四日の独立記念日などとは性格が異なっています。               `
  でも、エルムウッド・パークではだいじな日なのです。それはエルムウッド・パーク、そしてシカゴの
周辺にはイタリア系のアメリカ人がたくさん性んでいて、イタリアのジェノバ生れのコロンブスを大きな
誇りにしているからです。彼はスペイン、ポルトガルの援助を受けてアメリカを発見したのですが、イ
タリア系のアメリカ人にとってはイタリア人の英雄を賛美する日なのです。
 ボストンの近くでもイタリア系アメリカ人の数は多く、私が教えていたタフツ大学でも長い間、コロン
ブス記念日は大学の休日になっていました。いちおうマサチューセッツ州の休日なのですが、大学は
かならずしも休まなくてもよい日なのです。大学としては、できるだけ休みたくないのですが、イタリア
アメリカ人の学生はほとんど休んでしまうので、大学として休日にしたほうが、追試験や宿題の期
限延長などの手間がはぶけるのです。
 ところが、ユダヤアメリカ人学生のほうが多くなると、コロンブス記念日は休まずに、十月七日の
ヨム・キッパー(ユダヤ人の贖罪の日)を休日にすることになりました。より多くの学生が休んでしまう日
を大学の休日にしたほうが、教師、学生ともに混乱が少なくなるからです。もっとも学生の多くは、
ヨム・キッパーとコロンブス記念日の両日とも休みにすべきだと考えているようです。
 エルムウッド・パークでは、コロンブス記念日を単純にお祭だとしか考えませんでしたが、最近の歴史
書(たとえば、ハワード・ジン著『アメリカ人民の歴史』)によると、コロンブスアメリカ「発見」は、私たち
が考えているような平和な旅ではなく、殺人や強盗に満ち満ちた血なまぐさい侵略だったとのことです。
またヨム・キッパーにしても、日本では第四次中東戦争とよばれているヨム・キッパー戦争のイメージが
強烈です。




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