秋葉忠利著書  ハロウィーン

             アメリカ人とのつきあい方

           3章 アメリカの年中行事

                     ハロウィーン

 子どもたちにとって楽しみなのは、ハロウィーンです。十月末にカボチャをくりぬいて、人の顔の形をした提灯を作ります。そして骸骨や幽霊の人形などといっしょに窓に飾りつけるのです。こうした準備の後、万聖節の前夜、十月三一日に、大人がびっくりする(と小さい子どもは本当に信じているようです)仮装をして、子どもたちが近所の家の戸を叩きます。戸を開ける大人に”Trick or treat.”(っまり、「なにかおいしいものをくれないと、いたずらをするぞ」というおどしです)と声をかけます。
 子どものいる家はもちろん、いない人も、夕食のすんだころには近所の子どもたちが現れることを期待して、あめやガム、チョコレートなどを用意しておきます。サマーズ家にも、近所の子どもたちがいろいろな仮装をしてやってきました。スティーブがお菓子を渡し、私は、その頃まだ高かったフラッシュ・バルブを使い過ぎないようセーブしながら写真をとりました。
 安いお菓子を買っておけばすむことですし、子どもたちの仮装を誉めてやるのも楽しいはずなのですが、それでもなかには、ぜったいにお菓子をやらない人もいます。仕事で留守にしなくてはならない人もいます。
 そんな場合、ハロウィーンの日の「了解」によると、子どもたちは、いたずらをしてもよいのですが、ほとんどの子どもは、いたずらをしません。いたずらをする場合も、ほほえましく実害のないものという原則があります。留守の家、ドアを開けない家にはいたずらをするなという親もあります。
 しかし、最近のハロウィーンにはかげりが見えます。チョコレートの包みやガムの包みのなかに針やカミソリの刃、あるいは毒薬を入れて子どもに渡す人のいることが毎年報じられます。親たちは子どもに、知人の家だけを回るように言い聞かせたり、子どもがもらってきた菓子類をすべて入念にチェックしたりするようになりました。
 また、本来ならもう大人のほうに属していて、ハロウィーンには近所の家を訪れる代りに、仮装パーティーでも開くことで、自分たちだけの楽しみを追っていてもよいティーンエイジャーたちの間に、度の過ぎたいたずらをする傾向も生じてきました。生卵を投げつけられるのも、後の掃除が大変ですが、窓ガラスを割ったり簡単に手の届かない所に動物の死骸を置いたり、糞尿をまいたりするケースもあるようです。


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